大きな風呂敷をしょって歩くおばあさん

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このお話は悲しいというか切ないというか…何ともやりきれない気持ちになるお話です。
私が東北のある田舎町に引っ越してきたのは半年前。会社の転勤に伴い、家族ともども引っ越しをしてきました。田畑が多く、雑木林や森があちこちにあり、隣のお家まで行くにしても車を使おうかと考えてしまうほど、ゆったりとした環境です。

私がその人に気付いたのは、仕事がお休みの日。昼前まで寝ていた私がタバコを吸うために玄関から外に出てみると、車がたまに通る程度の道の向こうから大きな風呂敷包みを担いだ小柄な人物が歩いてきます。「行商の人がいるんだあ」と思いながら見ていると、近づいてきた人物はとても小柄なおばあさん。それに反して大きな風呂敷包みはおばあさんの体半分ほどもあるもので、見ているのも辛そうなくらい重量感があります。

目の前を通りすぎる時、おもわず「大変ですね」と声をかけると、ちらりと私を見て「なんもなんも…」と呟きながら同じ速度で歩いていきました。
家の中に戻り居間でテレビを見ている家族にその話をすると、中学校で色々な情報を耳にしている長女がこう言いました。

「そのおばあちゃんね、この町内ではすごく有名なんだって。80歳を過ぎているおばあちゃんで、息子夫婦と孫と一緒に住んでいるらしいけど、その息子夫婦や孫が『自分の物を盗む』って言って、自分の所有物を全部風呂敷に包んでいるんだって。そしてお隣の家に行くのにも買い物に行くのにも、どこへ行く時のその風呂敷をしょって出かけるんだって。亡くなったおばあちゃんの旦那さんの位牌も入っているらしいよ…」

盗まれるという被害妄想なのか、事実なのかは別にして、先ほど目の前を通ったとても小柄なおばあさんが、体の何倍もあるような大きな風呂敷を抱え、枝のような足でとぼとぼと歩く姿は、とても悲しく切ない想いになりました。

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